DWT/MSBSグループ

・グループの概要
 DWT/MSBSグループでは磁力支持天秤装置 (Magnetic suspension and balance system, MSBS) の開発・改良及びそれを用いた風洞試験を行っています.通常の風洞試験ではスティング,ストラット,ワイヤのような機械的装置によって模型を流路中に支持します.しかし,機械的装置の干渉により気流の非対称性や渦崩壊を生じ,後流や空気力に影響を与えるため正確な評価は困難です.MSBSでは支持干渉を排除した理想環境に近い風洞試験を行うことができるため,通常の風洞試験では再現が困難な流れ場の再現・計測に向けた研究やそのような流れ場の解明を行っています.また,模型に動きを加えることも可能なため,動的風洞試験と呼ばれる模型の運動を伴うような流れの風洞試験も行っています.

・MSBSについて
 MSBSは,流路周囲に配置された電磁石によって生じる磁気力を用いて,風洞模型の浮揚・支持を実現するシステムです.これを用いれば,通常の風洞試験で避けて通れない支持干渉問題を解決できます.本装置では,電流値を変化させることで多自由度での模型の姿勢制御が可能です.さらに,電流値から模型に作用する空気力も推定することができます.また,静的な支持だけでなく下の動画のように模型を運動させることも可能です.本研究室では大きさの異なる2つのMSBSを使用し研究を進めています.1つは当研究室所有の0.3-m MSBSで,東北大学基礎空力研究用小型風洞 (T-BART) に取り付け可能です.もう一つは東北大学流体科学研究所が所有する1.0-m MSBSです.こちらは世界最大規模のMSBSであり,低乱熱伝達風洞に取り付け可能です.

1. 気流と平行に支持された円柱周り流れ (0.3-m MSBS)
 下図は0.3-m MSBSにより静的に磁力支持された円柱のPIV計測の様子です.MSBSを用いることで支持干渉がない流れ場の計測が可能であり,スティングなど機械的支持装置の影響を受けやすい問題設定においても精度の高いデータが取得可能です.また,空気力と同期して速度場を計測することで,後流と空気力の関係の議論が可能となりました.さらに,模型に内蔵できる無線通信式の圧力計測装置を開発することで模型表面の圧力も同期計測可能です.

0.3-m MSBSにおいて気流と平行に支持された円柱周りのPIV粒子画像

 

2. 気流と平行に支持された円柱周り流れの動的風洞試験 (1.0-m MSBS)
 MSBSは静的な支持だけでなく動的な支持も行えます.下図は1.0-m MSBS による円柱の静的(左図)および動的試験(右図)における後流の可視化の様子です.後流の変動周波数に合わせて加振した場合に後流幅が大きくなることが示され,円柱にかかる空気力が増幅されることを明らかにしました.また,動画からは後流の渦構造に違いがあることが分かります.

 

3. 非軸対称物体の風洞試験に向けた模型位置計測法の改良(1.0-m MSBS)

 東北大学で運用しているMSBSは模型位置計測手法の特性のため基本的に軸対称物体に対してのみ適用されてきました.しかし,航空機模型など実用上は非軸対称の模型を支持することが求められます.下図は1.0-m MSBS により磁力支持された宇宙往還機模擬模型の様子です.非軸対称物体の風洞試験に向けた計測法の改良がなされ,幅広い模型形状へ適用が始まっています.

1-m MSBSで浮揚された宇宙往還機模型

 

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